執事の人間関係

使用人ホール Estate Staff in a Servants' Hall
↑使用人ホール。

 雇い主である主人との相性の良し悪しが、職場の居心地に影響します。それでも執事たちは辛抱しつつ奉公していました。
 給金のためもありますが、一番の理由。
 紹介状、です。
 もし紹介状で悪いことを書かれてしまったら、転職がうまくいきません。つぎの仕事を見つけても、新しい主人に送られたかつての主人の紹介状のおかげで、すべてが台無しです。たとえば、物を盗むとか、嘘とつくとか、酒飲みだとか……。
 たとえ冤罪であろうが、そこへ書かれてしまえば、悪い使用人として扱われてしまうため、雇われることはないでしょう。

 しかしなかには我慢ができず、1840年に貴族の主人を殺してしまった従僕もいます。深夜、呼び出しのベルが鳴り湯たんぽが要ると思って用意していったら、要らないと言われ、また呼び出しがあって行けば、やっぱり湯たんぽを用意しろと。主人の気まぐれで何度も起こされた挙句、怠惰だと叱責されました。日頃の恨みもあったのでしょう、従僕は主人を殴り殺して、銀器等を盗み、逃走しました。
 現在だったら情状の余地はあるでしょうが、当時は労働者階級への偏見もあり、あっさり絞首刑になっています。裏を返せばそれだけ、使用人たちの反乱を恐れていた意味にもなります。すぐそばに控えている使用人たちがその気になれば、いつでも主人の命を奪うことができるのですから……。

 ただ、すべての主人が気まぐれだったり厳格というわけではなく、優しい雇用主もいました。とくに貴族などの上流階級では、身分の差が大きいこともあり、かえって使用人へおおらかに接しています。なぜなら、絶対的な身分が主人たちにはあるから、立場を覆される心配が皆無だからです。貴族として下々へ寛大な態度を取ることが美徳とされていたのもあります。
 あまり裕福でない中流階級の主人ほど、身分の差を誇示しようとして、かえって厳しく、ときには奴隷のように使用人を扱っていました。
 ただ執事たちは富裕層や上流階級のお屋敷で奉公するのが普通でしたので、メイドほど悲惨な現実は待ってはいませんでした。

THE PITFALLS OF CULTURE.

 執事は使用人たちを監督する頭としての立場もあります。
 当然、みな、素直に言うことを聞くわけではありません。とくに従僕の扱いに苦労していて、何度も叱るうちに孤独になってしまいます。監督者としての立場が壁になってしまい、部下たちに距離を置かれるのです。孤独に耐えられず、従僕として降格転職した執事もいたほどです。

↓使用人を呼び出すベルの数々。時代が下ると呼び出しブザーになった。

Servants Bells
servants bells
Servant bells
servants 2
Servant quarters, Commandery
Servant's Bell

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