当時のロンドンを舞台にした小説などでよく登場する場所を簡単に紹介します。
下記のコメントはすべて19世紀末当時が基準になります。
セント・ポール大聖堂
……3代目の聖堂は1710年に完成。2代目はロンドン大火で消失。長さ152.5メートル、内部の高さ27メートル。毎日6回の礼拝が行われている。わずかな入場料を払えば、地下礼拝堂、ギャラリー、図書室の見学ができる。
ロンドン橋
……1831年石造りの橋が完成。それまでは木製。5つのアーチを持った美しく簡素な橋。歩行者や馬車の往来が激しく、渋滞しがち。
ロンドン塔
……もともと王家の居住城だったのが、国事犯の牢獄になった歴史ある建物。19世紀は博物館となり、甲冑や武器のコレクション、王冠、王笏などの宝物が保管されている。入場料6ペンス、月曜日と土曜日は無料。
イングランド銀行
……1738年に最初の建物ができた。その後、拡大。保安上、窓がほとんどない。平日は一般人も見学できる。
タワー・ブリッジ
……1894年完成。当時の技術の結晶を体現した橋で、中央の跳ね橋の部分が水力で垂直で開く。水面から42メートルの高さには歩道があり、跳ね橋が開く時、エレベーターに乗って利用する。
王立取引所(ロイヤル・エクスチェンジ)
……イングランド銀行の近くにあり、コリント様式の柱が見事な建物。中庭だった部分にはガラスと鉄骨でできた屋根がつけられ、回廊ではロンドンにちなんだ絵画を展示している。業者たちは火曜日と金曜日の午後3時半から4時半まで集まる。上にはロイズの事務所もある。
チープ・サイド
……ロンドンの大通りのひとつ。賑やかであまり治安が良くない。セント・メアリ・ル・ボー教会が見える。
中央郵便局
……道の東西に建物がある。東側が1829年、西側が1873年に建った。増加する郵便物を処理するため1893年、北側にビルが建った。西側には電信部門(電報)、北側には中央郵便貯金局がある。
ニューゲート・監獄
……1770年創立。1852年に改装され独房が設けられた。正面にある広場で公開処刑が行われたが、1868年以降は内部で執行。19世紀末は中央刑事裁判所で未決囚を収容する施設として使われた。見学には内務大臣の許可が必要。
ロンドン大火記念塔(モニュメント)
……1677年に建設。ロンドン大火を記念したもので火元は数フィート東のパン屋だった。石造りの塔の内部は空洞で、高さ61.6メートル。入場料3ペンスで内部を昇ることができる。定休は日曜日。
フリート・ストリート
……文学に深いゆかりがある大通り。ロンドンで一、二を争う賑やかさ。ラドゲイト・サーカスとストランドのあいだを結び、新聞社や出版社が多く並んでいる。
ストランド
……ロンドンでもっとも古く交通量が多い通り。商店、劇場、新聞社などがひしめく商業地域で、シティとウエスト・エンドを結ぶ幹線。
王立裁判所
……1882年に落成。152.2メートルに渡って建物がストランドに接している。19の法廷と、1000以上の部屋がある。開廷中は傍聴席、休廷中は事務局に申請して法廷内部を見学できる。
コヴェント・ガーデン市場
……ストランドに近い市場。水、木、土の早朝から午前10時まで、たくさんの馬車や荷物、人が往来する。隣接する教会には多くの俳優たちが眠る墓地がある。
大英博物館
……ブルムーズベリーのグレート・ラッセル・ストリートにあり、1753年に政府所有となる。1852年にギリシアのイオニア様式の建物が完成。一般に公開されており、司書に入室許可を得れば大閲覧室も研究場所として利用可能。写本、版画、絵画、コイン、メダル、エジプトやギリシアの遺物、中世や有史以前の発掘品などが大量に展示されている。
トラファルガー・スクエア
……ネルソン提督の記念柱が建っている広場。44.2メートルの高さがあり、1843年に建立された。四方の台座にライオン像が置かれている。
セント・ジェームズ・パーク
……チャリング・クロスの近く。大きな浅い池があり冬にスケートを楽しめる。東側に近衛騎兵連隊司令部の閲兵場がある。元はハンセン病患者の収容施設だったが、ヘンリー8世が王宮に改築、その後、公園となる。
バッキンガム宮殿
……ロンドンでヴィクトリア女王が居住する宮殿。セント・ジェームズ・パークの西側にあり、正面の長さは109.8メートルに及ぶ。女王のの居室は北側。基本、見学は許されないが、女王が不在のとき式部長官から許可が降りる場合がある。
ウェストミンスター寺院
……英国の教会でもっとも大きい寺院。1503年に建物の全体が完成された。英国の王族たちや、歴史的著名人が眠る墓所である。礼拝堂と東側の拝観は月曜日と火曜日が無料。その他の日は6ペンスが必要。
国会議事堂
……正式名称はウェストミンスター宮殿。ホール、礼拝所、回廊などが残存。かつてはホワイト・ホール(民事裁判所)、オールド・ホール(貴族院)、財務裁判所もあった。エリザベス女王統治から、議会のみに使用されるようになる。議会が休会のとき、式部長官の事務局へ申しこめば見学が可能だが、開会中は傍聴席のみとなる。
ウエストミンスター橋
……国会議事堂を望める美しい大橋。長さ353.8メートル、幅26メートル。
ピカデリー・サーカス
……ヘイマーケットからハイド・パークコーナーまで、1.6キロメートルあるピカデリー通りの交差点。流行の中心地。北側に商店街、南側にグリーン・パーク、近くに貴族の邸宅が並ぶ。
リージェント・ストリート
……1813年に建築。全長1.6キロメートル。老舗や高級店が並ぶ通りで、ショーウィンドウには選りすぐりの品物が展示されている。クリスマス等、たくさんの買い物客や観光客が訪れる。
オクスフォード・サーカス
……オクスフォード・ストリートとリージェント・ストリートが交わる円形の交差点。警官が交通整理をするほど、往来が多い通り。ロンドン有数の高級店が多い。
ハイド・パーク
……ケンジント・ガーデンズに隣接しており、境界は曖昧。サーペンタイン池、ロットン・ロウ、マーブル・アーチ(入口にある凱旋門)、ウェリントン公像がある。
ロットン・ロウは騎馬専用、隣に歩行者用のドライブがあり、社交の季節になると着飾った人々で一杯になる。
ケンジントン・ガーデンズ
……ケンジントン宮殿、ヴィクトリア女王像、南側にアルバート記念碑がある。もっとも美しい王室御苑と言われる。ヴィクトリア女王は1819年ケンジントン宮殿で生まれた。
リージェント・パーク
……1838年から一般公開。動物学会や植物学会の植物園、弓術教会の用地が大部分を占める。夏になると日曜日の午後、ブラスバンドの演奏会が行われ、周囲には美しい花が咲き誇る。
アールズ・コートの観覧車
……ロンドンの西部にある巨大な観覧車。スリリングさが大人気で、いつも長蛇の列ができる。高所からロンドンの街を望める。
ロンドン動物園
……リージェント・パークの北側にある。野生動物、鳥類、爬虫類を収集しており、19世紀末時点で世界最大級。午前9時から日没まで営業しており、入場料は1シリング。子供は半額の6ペンス。日曜日は会員と前売り券を持っている人のみ入場可。初夏の毎週土曜日、午後4時から6時まで、軍楽隊の演奏が行われる。子供たちに人気なのが象の背中乗り。
ハムステッド・ヒース
……ロンドンの郊外にある自然豊かな丘陵地。中心部から近いこともあり、行楽客が多い。休憩場所としてジャック・ストロース・カースルなどのパブがある。
クリスタル・パレス(水晶宮)
……ロンドン郊外のシデナムに1854年建設。全体がガラスと鋼鉄でできており、1851年、万国博覧会に使用された建物の巨大な袖廊部分を再利用した。パレスと庭園は毎日公開されており、入場料1シリング、年間定期入場料は1ギニー。4000人収容のコンサートホールでは10月から4月まで定期演奏会、花火大会、演劇、花の展示会、水族館や画廊もある。
※参考書籍
100年前のロンドン (100年前シリーズ)
上記で挙げた以外にも名所をたくさん紹介しています。