交霊会と降霊会(オカルト)

心霊写真

心霊ブームの始まり

19世紀なかば。アメリカのボストンで起こったタイタス事件を契機に、欧米の科学者たちが心霊現象を研究するようになりました。
タイタス事件とは、行方不明になったまま帰ってこない娘が、母――タイタス夫人の夢に出てきて、水死した場所を教えるというもの。その通りに探したら、少女の死体が川から発見されました。

心霊写真

その後、ポルターガイストに悩まされる幽霊屋敷の検証研究や、フォックス姉妹が世界初の職業霊媒師として活躍したことで、一気に心霊ブームが欧米に広がります。とくにアメリカとイギリスで盛んでした。

やがてダーウィンが進化論を発表したことで、心霊研究を非難する一派が出てきますが、真偽のほどはともかく、次から次へと心霊現象の報告や、霊媒師が登場します。

テレパシーの実験

しかしほとんどの心霊現象は”偽物”でした。さまざまなトリックを駆使し、大衆を欺いて商売にしていたのです。
それでもごく稀に真実の霊能力を持った霊媒師もおり、心霊研究会(SPR)の科学者たちがその研究成果を発表しました。当時から否定する科学者は大勢おり、心霊研究は現在でも解明されていません。

心霊写真

交霊会と降霊会の違い

交霊会……霊との交信、交流が目的の会。霊媒師を使って会話をする。

交霊会

降霊会……心霊現象を体験するのが目的の会。ポルターガイスト現象や、心霊写真等。

主な交霊、降霊術

降霊会
・テーブル・トーキング
……1850年代のアメリカで始まり、流行した。何人かが集まって一本脚のテーブルを囲んで座り、テーブルの端に指を置いて、質問をする。霊が反応して、テーブルが傾き、揺れ、ときには空中に浮かんだという。ポルターガイスト。
しかし大半がインチキであり、足や手をそっと使ってテーブルを動かし、糸でカーテンを揺らし、関節を鳴らしてラップ音を作り出した。それらのインチキを暴いた報告が多数あり。

・霊媒
……霊媒する人間を支配霊が憑依し、トランス状態になった霊媒師が次々と他の霊を呼んで交霊をする。
これもほとんどの霊媒師が偽物(ペテン師)だった。職業霊媒師として収入を得ていたのである。が、ごくごく稀に例外もあった。

・テレパシーと透視
……言葉や文字を使わず、心と心で通じ合う現象。送信者と受信者に別れ、メッセージやイラストをテレパシーで送り、再現した。心霊現象の基礎だが、現代でいう超能力?
インチキ透視の場合、アルコールで湿らせた海綿を隠し持っておき、封をした紙をそっと濡らして透けて見えた文字を読み取ったという。

Ouija Board
Ouija Board / jmawork

・トーキングボード
……ニスを塗ったつるつるの長方形の板に、『イエス』『ノー』の文字が上辺の左右に書かれ、下辺には『グッバイ』『グッドイヴィニング』。中央にアルファベットが並んだもの。霊に語りかけると、その上を輪が滑り文字を指す。質問にはい、いいえを答えさせたり、文字の並びでメッセージを受信する。日本でいえばこっくりさん。
まずアメリカで大流行し、1880年代にはウィジャボードと名を改める。フランス語のウィーとドイツ語のヤーが由来。

自動書記
・石版書記
……霊媒師が交信し、憑依した霊に石版へ、メッセージを書かせる現象。
一時、有名になったものの、すぐに科学者によってインチキを暴露されてしまった。

・エクトプラズム
……霊的エーテル論。有名な霊媒師ブラヴァツキー夫人が提唱した。エーテルとは宇宙からしみだしたクリームのようなもので、それらがあらゆるものに浸透し、霊との交信を可能にするという説。だが、ブラヴァツキー夫人は後年、詐欺師だとして心霊研究会が暴いている。
そのエーテルを物質化する現象がエクトプラズム。

・ダウジング
……ハシバミの棒を使い、水脈や鉱脈を探し当てる。ケルト地方やアイルランドでは、ダウザーとして古くから占い師が存在しており、井戸を掘るための水脈を探し当てたという報告が残っている。

19世紀に活躍した有名な霊媒師たち

・フォックス姉妹。
……アメリカ人。霊媒のスターとして一躍有名になるも、後年、インチキを新聞社に告白して非難される。姉妹は困窮し、不遇な晩年を迎えるも、少女時代の霊媒は本物であったという説がある。姉妹が霊媒したとおり、家の土間の中から死体が出てきたからだ。

・ダニエル・ダングラス・ヒューム
……スコットランド生まれ。空中浮揚、奏者不明の流れる音楽、闇から突然現れる手、などの現象を霊媒した。ナポレオン三世やドイツ皇帝も彼の降霊会に参加したという。実験するもインチキは見つからなかったという。

ブラヴァツキー夫人
・ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキー
……ロシア生まれ。ヒマラヤで聖人と会い、神智学協会を設立し、世界中へ影響を与える。心霊研究会によってインチキを暴かれ、後年はインドへ移り住んだ。

パイパー夫人
・レオノーラ・エヴェリーナ・パイパー
……アメリカ人。サイコメトリー(物から情報を読み取る)、自動書記、正確な予見透視など、驚異的な能力を持った霊媒師。心霊研究会が何度も実験し、彼女の能力は本物だと証明している。

・エウサティア・パラディーノ
……イタリア人。すぐにインチキに走ってしまう困り者だったが、ときおり説明のつかない降霊現象を見せたという。空中浮揚、物質化、エクトプラズムを見せる。

交霊会に傾倒した有名人

コナン・ドイルと霊
・アーサー・コナン・ドイル
……シャーロック・ホームズシリーズの作家として有名。著書に『心霊主義の歴史』がある。
若かった息子が世界大戦で戦死してしまったことで、心霊研究にのめりこんだといわれている。晩年は、みずから交霊会を開催したほどだった。

・マーク・トウェイン
……『トム・ソーヤの冒険』の作家として有名。
弟ヘンリーの死を予知した夢を見て以来、心霊現象を追求していたといわれている。心霊研究会の絶大な支持者だった。

参考文献
幽霊を捕まえようとした科学者たち (文春文庫)
幽霊を捕まえようとした科学者たち (文春文庫)
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