19世紀当時、すでに煙草は紳士の嗜好品でした。誰でも吸っていたわけでなく、初めは上流階級に広まり、やがて庶民、女性へと普及していきます。
煙草の歴史
部族が吸っていた煙草を発見したのはコロンブスで、彼が新大陸から持ち帰ったのが始まりでした。
やがてスペインからポルトガル、フランス、そしてイギリスへ伝わります。
16世紀のエリザベス朝時代、喫煙習慣を広めたのはサー・ウォルター・ローリーでした。
煙草の葉を詰めたパイプをくゆらす姿はまさしくダンディそのもので、注目されることで他の上流階級紳士へ広まります。
しかし、ジェイムズ一世が即位すると、煙草嫌いだった王によって、サー・ウォルターは処刑されてしまいます。シェイクスピアの戯曲に煙草が登場しないのは、嫌煙王の影響だと言われています。
しかしすでに広まっていたのもあり、その後も煙草が廃れることはありませんでした。
17世紀になると、嗅ぎ煙草(スナッフ)が流行します。とくに当時のフランスが盛んだったようで、男性だけでなく上流階級の女性たちも夢中になりました。
嗅ぎ煙草専用の小箱に入れ、鼻から粉末を吸います。そのとき鼻や服が汚れるため、拭き取り用のハンカチがかかせませんでした。
18世紀にコーヒーハウスが誕生し、そこで紳士たちがパイプをくゆらせるのが流行しました。やがてクラブに変わるコーヒーハウスは、紳士御用達の憩いの場でした。
19世紀中頃ぐらいに葉巻(シガー)が流行します。
上中流階級の紳士たちは好んで吸いました。とくにハバナ産の葉巻が極上ものとして知られました。
19世紀なかばをすぎると、紙煙草(シガレット)が流行し始めました。
クリミア戦争でロシア兵たちが、紙に巻いて吸うのを見たイギリス人が真似たことで知られました。
あっという間に吸える紙煙草は小粋な紳士のアクセサリーとして、19世紀末、爆発的に流行しました。
↑おしゃれなアイテムとしてシガレットケースも流行しました。
煙草と健康と女性
そもそも煙草はアメリカンインディアンたちが、病気を治癒するために吸ったのが始まりです。そのため、当初は薬として普及しました。
しかし、過剰な喫煙による肺病等の害も知られるようになると、煙草は健康と不健康の狭間に置かれます。すでにダンディな紳士としてのアクセサリー化していたため、彼らが煙草を手放すことはありませんでした。
やがて、19世紀末になると、庶民がパイプで吸うようになります。第一次世界大戦後は、労働者の女性だけでなく、上流階級の女性たちも紙煙草を吸うようになりました。
それまで上中流階級の淑女が、煙草を吸うのは非常に下品で不健康だといわれていたのです。
だから紳士たちは女性のいる前で煙草を吸うことはしませんでした。
紳士たちが集まって煙草を吸うときは、専用の喫煙室か、それを兼ねたビリヤード室を使いました。
↑後日追記。
驚いたことに、少年ではなくアメリカの女優でした。当時、男装をする女性は実在しました。Not all our foremothers wore taffeta and lace – a gallery on Flickrを参照。
↑当時は未成年の喫煙は禁止されていませんでした。
紳士になる少年は、たいていパブリック・スクール時代に煙草と酒を覚えます。