執事同様、中世の城に行儀見習として奉公した令嬢たちが上級使用人の始まりです。家政婦や侍女をしていました。
城には下働きの男女も大勢います。当時は奴隷として働いていました。炊事、洗濯、農作業といった肉体労働に従事する代わりに、衣食住を与えられました。賃金はありませんが、温かい食事と寝場所があるだけでよかったのです。それだけ、城の外は危険でした。
中世から近世の使用人は男性がメインです。女はおもに農作業や酪農の働き手でした。家事使用人は家政婦が女主人の代理として、家事の一切を管理していました。困窮した中流階級の子女がなり手です。女主人の身の回りの世話する侍女も同様でした。
中流階級の家では妻と娘が家事をしており、メイドはまだ存在していません。
時代が下り、18世紀ごろになると家事使用人としてのメイドが登場します。そのころから家事をしないことが一種のステイタスになり、19世紀ヴィクトリア朝入ると一気にメイドの数は増えました。
対照的に男性使用人たちは給金と税額の高さと、女主人たちが扱いにくいのもあり、徐々に数を減らしていきます。女性だと男性の半分の給金で雇うことができました。
女性使用人のおもな職種を紹介
・家政婦(女中頭)
……女性使用人のトップ。女主人の代理として屋敷の家政を管理する。
・料理人
……その名のとおり、料理をする。家政婦のない家では、兼任した。
・侍女(小間使い)
……女主人の身の回りの世話をする。
・乳母(ナニー)
……女主人の代わりに子守をする。当時、奥様は子育てをしないのが一種のステイタスだった。
・家女中(ハウスメイド)
……屋敷の掃除をする。
・台所女中(キッチンメイド)
……料理人を補佐する。料理の下ごしらえや皿洗い。
・洗濯女中(ランドリーメイド)
……ひたすら洗濯をする。当時、洗濯は重労働だったが、経費のかからない洗濯屋へ出すようになると、洗濯女中は姿を消した。
・客間女中(パーラーメイド)
……従僕の代わりとして、接客や給仕をした。背が高く容姿の良さを重視された。
・女家庭教師(ガヴァネス)
……屋敷の子女を教育する。困窮した良家の子女が多く、使用人と客人の中間の扱いを受けていた。
・雑役女中(メイド・オブ・オールワークス)
……すべての家事をこなすメイド。メイドをひとりしか雇えない中流階級の家に多くいた。