職種ごとに簡単に紹介。
※上級使用人
・家政婦
……女性使用人のトップ。女主人の代理として家政を管理。敬意を払って独身でも「ミセス」と呼ばれた。鍵束を常に携帯している。
主な仕事。陶磁器の管理。パンやジャム、菓子の調理。紅茶他飲み物の準備。食料の購入と貯蔵庫の管理。石鹸やリネン、文房具など日用品の購入と管理。家庭薬の調合と治療。帳簿付け。女主人のスケジュール管理。家女中や台所女中の雇用。部下の教育。女主人の慈善事業(バザーなど)の補佐。
・料理人
……厨房のトップ。家政婦の指揮下には入らず、独自に台所女中を指導した。料理の腕が良ければ大きなお屋敷で部下を持ちながら奉公できた。料理人は欠かせない職種のため、女主人がメニューに口を挟めず、言いなりになることもあった。腕のない素人料理人だと、安い給金で部下もなくひとりで調理や掃除、皿洗い、給仕をこなした。
主な仕事。階上の朝食、昼食、晩餐の調理。食料の調達と貯蔵庫の管理。メニューの作成。
・侍女
……ひたすら女主人に仕える。そのため、ほかの使用人たちから距離を置かれることも。貧しい中流階級のレディや、ファッションに詳しいフランス人を雇うことが多かった。若い女性が多く雇われ、歳を取ると失業し、困窮する者もあったという。
主な仕事。女主人の着替え、身支度、整髪。帽子を飾る。小物を作る。ドレスを買う、または縫う。話し相手(コンパニオン)。外出のお伴。
・乳母
……女主人に代わって、子育てをする。当時は母乳をやると胸の形が崩れると信じられていたのと、子育てをする時間が無駄と考えられていたため。生まれたばかりの赤ん坊は、乳の出る女性を雇って母乳を吸わせた。ある程度成長すると、しつけなどの教育を兼ねた育児婦を雇う。大きなお屋敷だと子守女中に着替えや食事を任せ、教育に専念した。
さらに成長すると乳母は去り、女家庭教師が教育をする。男児ならパブリック・スクールへ入学するための学問を、女児なら教養と礼儀作法、ダンス、裁縫などの花嫁修業をした。
主な仕事。子どもの世話。食事、着替え、散歩、入浴、遊び相手や絵本の読み聞かせ、しつけなど。子ども部屋の管理。
※下級使用人
・家女中
……一般的に知られているメイドは、彼女たちのこと。午前はピンクや灰色のプリント地のドレスで掃除をし、午後は黒とフリルのついた白いエプロン姿で接客や給仕をする。
主な仕事。朝食前の暖炉掃除。暖炉の石炭の補充。寝室や居間、客間、玄関の掃除。家具や美術品の掃除。ベッドメイキング。従僕や執事のいない屋敷の場合、接客と給仕も加わった。
・客間女中
……執事や従僕のいない屋敷で、彼らと同じ仕事をするメイド。彼女らも従僕同様、背の高さと外見の良さが重視された。手荒れを防ぐため、水仕事はさせなかった。もしくは手袋を着用させた。フリルたっぷりの華美なメイド服が特徴。
主な仕事。接客。給仕。銀器磨きと管理。客間や居間の整頓。手紙の仕分け。
・台所女中
……料理人の下で働くメイド。一日中、薄暗く暑い厨房にこもって仕事をした。大きな屋敷では水仕事専用の流し場女中がいた。かなり過酷な労働のため、長続きしない少女も多かったという。徐々にステップアップしていき、台所女中頭になるのが目標。その後、料理人や家政婦に転職できる。
主な仕事。家禽の羽根を毟る、皮を剥ぐ、内臓を出す。野菜の皮むき。料理の下ごしらえ。食器や調理器具の清掃。調味料や調理器具の用意。畑や薬草園で野菜を収穫。料理人の補佐。
台所女中頭になると、使用人の賄い食を作ったり、子どもたちの食事を用意した。
・雑役女中
……上記で紹介したメイドの仕事を一手に担った。裕福でない中流階級の家庭が雇う。あらゆる家事をひとりでこなす必要があったため、最下層のメイドでもあった。賃金を安くすませるため、未経験のメイド少女を一年ごとに変える雇用主もいた。そのときは当然、家事がほとんどできないため、女主人が一から教える必要があった。