・コルセット
コルセットは身体の線を整えるために14世紀ごろからヨーロッパで男女問わず使用されました。やがて16世紀になると女性がたっぷりと膨らんだドレスを美しく着るために使われるようになります。
17世紀には胸を押し上げて豊かに見せました。素材は鉄のワイヤか鯨骨です。
↑1778年のマリー・アントワネットの肖像画。コルセットとパニエ(スカートに膨らみをもたせるワイヤー製下着)を着用した上にドレスを着ています。
19世紀ヴィクトリア朝時代になると、階級問わずコルセットが普及していくと同時に、貞淑な女性としての義務になります。ウエストが細ければ細いほど、結婚市場での価値が高まるからです。
理想のサイズは18インチ(およそ45センチ)だったといいますから、恐ろしいほど華奢な体型が好まれました。男性が片手でつかめるぐらいが理想的だったのです。
コルセットの弊害も生まれ、きつく絞った身体は内蔵や肋骨が変形しました。当時の小説で貴婦人がよく気絶したり、引きつけをおこしたり、病弱だったりするのはコルセットが遠からずの要因でした。
医者たちはきついコルセットは健康を害すると世間に訴えたものの、結婚市場で売れ残りたくない女性たちは、ほとんどコルセットをやめなかったそうです。
健康より美を優先する女性たちの姿は、今も昔も変わりなかったようです。流行に乗らないと、女同士から変わり者とみなされたのも同じですね……。
1840年代までは肩紐のついた固い鯨骨のコルセットが主流でしたが、人の手を借りないと着用できませんでした。
1850年代に入ると、肩紐が消え、丈も短くなっています。そのころはスカートの裾をふくらませるクリノリンが流行し、コルセットはあまり重要視されませんでした。
しかし、クリノリンが廃れる1870年代になると、ウエストを強調するためにふたたびコルセットが重要になります。丈も長くなりました。
1890年代には、素材にシルクやサテン、リボン、レースと、装飾性が増して華やかになります。ランジェリーという言葉が生まれたのもその頃でした。
↑1885年のドレス。美しく着用するには、ウエストを絞るコルセットが必要でした。
少女が16歳前後で髪上げをし、裾の長いドレスを着るようになると、コルセットをつけ始めました。大人の女性としての象徴でもあったのです。
そのため、コルセットの着用カタログをポルノとして読む者もいたそうです。
20世紀に入ってもコルセットは着用されましたが、着脱が簡単な補正下着やブラジャーが普及すると徐々に廃れました。
・クリノリン
18世紀、スカートを広げるパニエが流行しました。動きやすくするため、左右に広がった釣鐘型でしたが、フランス革命時に廃れます。ゆったりとしたシュミーズドレスが主流になると、コルセットもいっとき、姿を消しました。
19世紀前半、スカートの裾をドーム状に膨らませるために、ペチコートが着用されるようになります。ペチコートは5~6枚ほど重ねて着なくてはならず、フリルもたっぷりついているため、重量もありました。
1850年代半ば、クリノリンの登場で、重くて煩わしいペチコート1枚だけになり、女性たちに歓迎されます。鯨骨バネ鋼をドーム状に骨組みにしたものの上に、ドレスを着ました。
1850年代末からクリノリンが巨大になってゆき、最大は周囲4メートルもありました。
危険で邪魔にならないはずがなく、当時の大衆紙にもクリノリンを着用した女性を皮肉った風刺画があります。座席を占領したり、馬車の乗り降りでひっかかって転んだり、男性には不評のファッションでした。
1860年代になると前側の膨らみが減っていき、1870年代に入るまでには廃れます。代わりに後部のみに膨らみをもたせるバッスルが流行しました。
・その他婦人下着
・ペチコートやクリノリンの下に履く、ドロワーズ。ズロースともいう。膝丈が主流。のちのパンツ。
・コルセットの下に着るキャミソール。
・ウールの靴下。高級になると白いシルク。
・コルセットとドロワーズがつながったコンビネーション。
……などがありました。
1884年のペチコート。
おまけ
↑男性用コルセット。姿勢を正すため、軍隊では着用を義務付けられました。
↑コルセットの着用中。人の手を借りないと美しく腰を絞れなかったとか……。
↑フランス女優ポレール。なんと41センチ!大丈夫だったんだろうか、と心配になるレベル。
↑クリノリン全盛期の当時の着付け写真。メイド数人がかりでドレスを着せないといけないほど、大きかったのがわかります。これで外出したらかなり邪魔なのに納得。
↑1890年のカタログ。コルセットほか、たくさん商品が紹介されてます。注目はバストを豊かに見せる胸パッドが当時すでにあったこと。女性の悩みは今も昔も変わらず(苦笑)
(フィラエィシ) PhilaeEC 3色選べるゴスロリ刺繍入り ドレス オーバーバストコルセット
↑21世紀の現代でも、コルセット愛用者がたくさんいるようです。ファッションだけでなく、腰のくびれを作りたい時にいいみたい。(かなり大きなサイズが揃っているから、需要の傾向がわかります)